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東京都市大学  ゲルマニウム量子ドットをベースとした室温発振レーザーを可能とする極めて高効率に発光する電流注入型の発光デバイスの開発に成功

〜シリコンレーザー実現に向け飛躍的な前進〜 総合研究所シリコンナノ科学研究センター

 東京都市大学総合研究所のシリコンナノ科学研究センター(東京都世田谷区、センター長:丸泉琢也)では、シリコン(Si)をベースとした室温発振レーザーを可能とする極めて高効率に発光する電流注入型の発光デバイスの開発に成功いたしました。
今回開発した発光デバイスは、2006年7月に本研究センターにて開発した発光デバイスを基本コンセプトとし、高度な結晶成長技術と先端プロセス技術を駆使することにより、電流注入による高効率発光を実現したもので、今後のシリコンレーザー実現に向けて、飛躍的な前進をもたらすデバイスとなります。
 本デバイスは、人工原子と呼ばれるゲルマニウム(Ge)の量子ドットを新たに開発したマイクロディスク(微小円盤)という光学デバイス用の構造と組み合わせたもので、室温において、波長の幅が狭く強度の大きな発光を電流注入により初めて実現することができました。これは、VLSI(Very Large Scale Integration)と呼ばれる半導体集積回路の性能を、飛躍的に向上できる光配線を可能とするもので、これまで電気信号としてのみ情報を処理していたVLSIに、光信号処理を可能とする革新的な技術であり、世界的に熾烈な研究開発競争が繰り広げられているテーマとなっています。
 なお、この研究は文部科学省の「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」(次世代LSIに向けた新機能シリコン系ナノ電子・光・スピンデバイスの創出)の一環として実施されたものです。

【開発背景】

 シリコン系の材料は間接型半導体と呼ばれ、発光効率が非常に低いためにこれまで発光デバイスの材料としては不適当と考えられており、シリコン製のVLSIに発光機能を付加することはこれまで困難とされていました。
 この問題点を解決するため本研究センターでは、電子を極めて狭い領域に閉じ込め、発光再結合確率を増やす量子ドットという構造をGeを用いて形成し、室温での発光を可能とする基本デバイスを2006年に開発しました。しかしながら、このデバイスは外部からの光を吸収した場合にのみ発光するため、集積回路の中に組み込み電子回路で発光を制御することができませんでした。このため外部から電流を流すことで発光させる電流注入型のデバイス開発に取り組みました。

【開発概要】

 Siに特有なSOI(Silicon On Insulator)という材料を利用し、Ge量子ドットの多層膜がSOI上に形成され、その上下が、ホールが多数を占めるp型Siと、電子が多数を占めるn型Siで挟み込みこまれ、外部から電流が注入できる構造を作製しました。さらにGe量子ドットで生じた発光が外部に漏れないように、全体の構造を微小な円形構造、すなわちマイクロ  ディスク形状に加工しました。マイクロディスクの直径が発光波長と同程度まで微細化されると、発光はディスク内部で円周方向に共振し、光強度が増幅されるという特性を積極的に活用することで、電流注入による室温高効率発光に世界に先駆け成功いたしました。

 電流注入型の発光デバイスの開発に成功した事は、シリコンレーザー実現に向け飛躍的な前進を成し遂げたといえます。

※添付の図は、量子ドット多層膜の上下をp型Si、n型Siで挟み込み、マイクロディスク形状に加工した発光デバイスの模式図とその電子顕微鏡写真、および発光のスペクトルを示しています。

図1 マイクロディスク共振器構造としたGe 量子ドット電流注入型発光デバイス(東京都市大学総合研究所)

図1 マイクロディスク共振器構造としたGe 量子ドット電流注入型発光デバイス

図2  電流注入型発光デバイスの電子顕微鏡写真(東京都市大学総合研究所)

図2 電流注入型発光デバイスの電子顕微鏡写真

図3 発光デバイスの特性:発光強度の注入電流依存性(東京都市大学総合研究所)

図3 発光デバイスの特性:発光強度の注入電流依存性

【本デバイスのメリット】

・配線遅延を極限まで低減し、VLSIの超高速化が可能
・光の特長を生かした並列演算が可能
・電気配線による発熱が起こらない
・光と電気を融合した新しい機能デバイスの開発が可能

【今後の展開】

 この開発により、信号を電気ではなく光で送る事が可能となり、消費電力が極めて少なくなるため、環境に優しいコンピューターなどの開発に応用されることなどが期待されます。
 光信号は、遅延のない極めて高速な信号伝達が可能となり、コンピューターの性能をあげる事もできます。電気信号では多種類の信号を同一のケーブルに重畳して送る事は難しいですが、光信号は簡単に重ね合わす事ができるため、送る情報量を飛躍的に高められます。また、光を重ねることで、新しい原理の信号処理装置を作る事も可能になるものと考えております。


東京都市大学総合研究所 シリコンナノ科学研究センター

東京都市大学 総合研究所  東京都市大学総合研究所は、大学における重要研究拠点として、2004年4月に発足し、主としてプロジェクト研究を強力かつ効率的に推進し、社会のニーズに迅速に対応するために組織されたものです。2005年度に文部科学省の私立大学学術研究高度化推進事業の一環として選定された2つのプロジェクト研究機構、すなわち、ハイテクリサーチセンターの一つである「シリコンナノ科学研究センター」と、学術フロンティアである「エネルギー環境科学研究センター」の2部門でスタートしています。
 現在は、主に文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業として選定されたエネルギー環境科学研究センターとナノカーボンバイオデバイス研究センターとシリコンナノ科学研究センターと水素エネルギー研究センターの4つのプロジェクト研究を重点的かつ総合的に行っています。その研究テーマは長期にわたって固定化することはなく、時代のニーズに対応し、変化させていきます。
 
 本研究所では、産業界との協働を積極的に推進することもモットーとしており、本学の産官学交流センターと連携し、企業との共同研究を通じて研究成果をいち早く社会還元することを目指しています。
 

(東京都市大学では、培ってきた先進の知的財産を、産官学の有益な交流を通じて、地域・社会の発展に還元するため、産官学交流センターを設立し、受託・共同研究などの研究プロジェクトを推進しています。)


【関連するリンク先】


〜本件に関するお問い合わせは、下記にお願いいたします〜
東京都市大学総合研究所 
シリコンナノ科学研究センター長 教授 丸泉琢也
 Tel:03-5707-0104(代)

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